製造業で、仕入先から値上げの連絡が来たら
材料価格が上がったら、どの見積をいつ直す? 製造業の見積原価の見直し方
最初に確認するのは「何が、いくらに、いつから上がるか」です。そのうえで、仕入れ値の表、原価表、見積書を順に直し、受注前にいくら残るかを確かめます。古い金額のまま気づかず受注しないための手順を、数字の例と一緒に説明します。
直す順番を先に見る先にやること
まず値上げ日を確認し、まだ受注していない見積を洗い出す
仕入先の連絡で、何が、いくらに、いつから上がるかを確認します。新しく作る見積は、材料を仕入れる時期が値上げ後なら、新しい仕入れ値で計算します。すでに顧客へ出した、まだ受注していない見積は、有効期限と取引条件を見て、そのまま受けるか、出し直すかを責任者と決めます。受注済みの金額は勝手に書き換えません。
出した見積の扱い
新しく作る見積、提示済みの見積、受注済みの注文を分ける
8月25日に出した見積の有効期限が8月31日で、受注が9月3日なら、古い見積のまま受けるか、新しい金額で出し直すかを確認します。表やシステムが自動で決めることではありません。契約や取引条件を確認し、責任者が判断します。受注済みの金額を一方的に書き換えてはいけません。
- まだ見積を出していない仕入れ予定が値上げ後なら、新しい仕入れ値で作る原価を計算した日を残す
- 提示済み・期限内そのまま受けるか、出し直すか確認する顧客に示した条件と取引条件を見る
- 期限切れ・まだ受注していない新しい金額で出し直す古い見積も履歴として残す
- 受注済み契約内容と減る金額を確認する合意した金額を一方的に書き換えない
- 同じ品を継続して納めている次に値段を変える日を決める対象品と顧客への連絡時期を残す
直す順番
値上げの連絡を、仕入れ値の表から受注前の確認まで反映する
購買が仕入れ値の表を直しても、営業がコピーした古い原価表や見積書が残っていれば、古い金額のまま気づかず受注するおそれがあります。担当者が別々の表や画面を使っていても、同じ材料と値上げ日を次へ渡します。
- 01値上げの連絡を確認する材料・単位・前後の金額・開始日
- 02仕入れ値の表を直す古い金額を消さず、新しい金額を追加
- 03原価表を計算し直す材料費を替え、ほかの費用も確認
- 04顧客に出した見積を確認する期限内か、出し直すか
- 05受注前に金額を確認する使う見積と、1個売って残る金額
値上げが始まる日発注日か納入日か、仕入先の通知で確認する
見積を出した日・有効期限顧客に示した金額がいつまで有効か
受注した日その日にどの見積と原価を使ったか
日付は三つに分ける
仕入れ値が変わる日、見積の期限、受注日は別に見る
仕入れ値は9月1日から上がっても、営業が8月に作った原価表をコピーして9月に使えば、計算は古いままです。値上げがどの発注や納入から適用されるか、見積がいつまで有効か、いつ受注したかを分けて確認します。
値上げが始まる日
発注日を基準にするのか、納入日を基準にするのかを、仕入先の通知で確認します。
見積の有効期限
顧客へ出した金額をいつまで約束しているか、見積番号と一緒に残します。
受注時に使った見積
どの売値と原価で受けたかを、後から確認できるようにします。
直す場所
直す場所は、値上げの連絡から受注記録までの5か所
専任の原価管理担当者がいなくても、同じ材料名、品番、見積番号から、次の五つを順にたどれるようにします。
- 01
仕入先からの値上げ連絡
材料名や部品名、規格、1個・1kgなどの単位、これまでの単価、新しい単価、値上げが始まる日を残します。kgあたりと1本あたりなど、単位が違う金額を同じ欄に入れません。
残すこと:材料・部品名 / 規格 / 単位 / 前の単価 / 新しい単価 / 値上げ開始日 - 02
仕入れ値の表
古い単価を上書きせず、いつまで使う金額かを残します。仕入先の通知で決められた日を境に、それより前に使う金額と、それ以後に使う金額を分けます。
残すこと:仕入先 / 前の単価 / 新しい単価 / それぞれを使う期間 - 03
見積に使う原価表
材料費、加工費、外注費、間接費を分けて計算します。この合計が「見積原価」です。材料費だけを直したのか、ほかの費用も同時に見直したのかが分かるようにします。
残すこと:計算した日 / 使った材料単価 / 加工費 / 外注費 / 間接費 - 04
顧客に出す見積書
顧客へ出す金額に加え、数量、仕様、納期、見積の有効期限、原価を計算した日を残します。値上げ時の扱いは、既存の契約や取引条件と矛盾しない範囲で決めます。
残すこと:見積番号 / 作成日 / 有効期限 / 数量 / 仕様 / 納期 / 原価を計算した日 - 05
受注の記録
受注日と、注文につながった見積番号を結び付けます。受注前に、売値、見積原価、売値から見積原価を引いて残る金額を確認します。古い条件で受ける場合は、責任者と理由も残します。
残すこと:受注日 / 使った見積番号 / 売値 / 見積原価 / 残る金額 / 責任者
数字で確認する
この例では、材料費が300円上がり、1個売ったときに残る金額が300円減る
材料Xの仕入れ値が1,000円/kgから1,120円/kgへ上がり、新しい金額は9月1日から使うとします。製品1個には2.5kg使います。数字は直す順番と計算を説明するための架空例で、実際の価格、顧客事例、利益の目安ではありません。
1個あたりの材料費は2,500円から2,800円へ300円上がります。加工費1,800円、外注費700円、間接費500円、売値7,000円が変わらないとすると、見積原価は5,500円から5,800円へ上がり、売値から見積原価を引いた金額は1,500円から1,200円へ減ります。
| 見る金額 | 値上げ前 | 値上げ後 | 受注前に確かめること |
|---|---|---|---|
| 材料1kgの仕入れ値 | 1,000円/kg | 1,120円/kg | 今回の仕入れに使う単価か |
| 1個あたりの材料費 | 2,500円 | 2,800円 | 2.5kgで計算しているか |
| 1個あたりの見積原価 | 5,500円 | 5,800円 | 加工費・外注費・間接費も今の金額か |
| 1個あたりの売値 | 7,000円 | 7,000円 | 顧客に出した見積と同じ金額か |
| 1個売ったときに残る金額 | 1,500円 21.4% | 1,200円 17.1% | 古い条件で受けるなら、理由と責任者を残したか |
この表の「1個売ったときに残る金額」は、売値から見積原価を引いた金額です。原価管理でいう「見積上の粗利」にあたります。会計上の利益や、製造・納品後に分かる実際の原価とは別です。
作った後に見直す
実際にかかった金額が違ったら、次の見積で直す場所を分ける
見積のときの予想と、製造後に実際にかかった金額に差が出たら、「予定より高かった」だけで終わらせません。仕入れ値が違ったのか、材料を多く使ったのか、作業時間が長かったのか、間接費の見込みが違ったのかを分けます。製造後に実際にかかった金額を、原価管理では「実際原価」と呼びます。
- 仕入れ値の差材料・部品・外注の単価を見直す
- 使った量の差材料の使用量と廃棄・端材を見直す
- かかった時間の差加工時間と段取り時間を見直す
- 間接費の差間接費の割り振り方と更新日を見直す
専用システムがなくてもできる
Excelなら、古い金額と新しい金額を両方残す
ファイル名を「最新版」に変えるだけでは、いつからどの金額を使うのか分かりません。Excelでも、同じ材料名、品番、見積番号から、次の内容をたどれれば始められます。古い金額と新しい金額、それぞれを使う期間を残すことを、システムでは「版と適用期間を管理する」と呼びます。
- 材料・部品名、規格、1個・1kgなどの単位
- 前の仕入れ値、新しい仕入れ値、値上げ開始日
- 原価を計算した日、計算に使った材料費・加工費・外注費・間接費
- 顧客の見積番号、作成日、有効期限
- 受注日、使った見積番号、確認した責任者
今日、1件だけ確認する
直近で値上げされた材料を一つ選び、まだ受注していない見積までたどる
仕入先からの値上げ連絡 → 仕入れ値の表 → 原価表 → 顧客に出した見積 → 受注の記録の順に見ます。「いつから上がるか」「どの金額で計算したか」「どの見積を使うか」のどこかが分からなければ、そこが最初に直す場所です。