電子契約と紙を併用するには?最初に変える書類と取引先の決め方
電子契約を始めたい。でも、紙を希望する取引先もあり、すべてを一度に変えるのは難しい。そんな会社では、これから結ぶ契約のうち、どの書類を、どの取引先から変えるかを決めるところから始められます。
知式では、その範囲に、残る紙対応と相手への説明、締結が完了したかを確かめる時間まで含めて考えます。架空の保守サービス会社を例に、最初の対象と担当、見送る条件まで決めてみます。

これから結ぶ契約と、過去の紙を分ける
紙の契約書には、これから相手と締結するものと、すでに締結を終えて保管しているものがあります。前者では相手とのやり取りを変え、後者では必要な書類を探せるようにします。それぞれ、使う時間も担当する仕事も異なります。

過去の紙をスキャンすれば、内容を画面で見られるようになります。ただし、それを新たに電子契約で締結した件数には数えません。新しい契約でメールやリンクを送った時点も、まだ相手の対応を待っている途中です。締結の完了は、相手の合意と必要な手続きが済んだことを確かめて判断します。
今回の目的が新しい契約のやり取りを変えることなら、古い紙の整理は別の仕事として残せます。過去の書類をすべて整理し終えるまで、新しい契約の検討を待つ必要はありません。
相手の準備と、社内で使う時間を確かめる
最初の対象は、書類名だけで一括りにせず、取引先と組み合わせて絞ります。同じ書類でも、電子で進めたい相手と、紙を希望する相手では、準備も説明にかける時間も変わるためです。
その書類を、その相手と進められるか
相手には、電子で進める意向に加え、使う方式、実際に対応する人、契約に合意する権限を確認します。自社でも、使う契約文面、承認と締結の権限、利用するサービスで必要な対応を確かめます。書類や取引ごとの個別要件は、この段階で契約を確認する社内担当や必要に応じて専門家に確認します。
メールアドレスが分かっているだけでは、相手の電子契約への意向や対応者の権限は分かりません。自社の内容承認が済んでも、相手との合意は別に確かめます。未確認の点があれば、その組み合わせはいったん対象から外し、確認する担当を決めます。
説明から完了確認まで、誰が時間を使うか
送付担当を決めるときは、最初の説明、相手からの質問への対応、期限までに完了したかの確認も一緒に割り当てます。紙の発送や返送確認を続ける人が、その仕事に電子契約も上乗せできるかまで見ます。
契約を終えたい日までに説明と確認の時間を取れないなら、今回は慣れた紙の方法を選びます。電子で対応できる相手でも、社内に確認を担う余裕がなければ、その相手先への導入は保留できます。
紙を続ける方法も含めて、五つから選ぶ
相手と自社の準備が分かると、手をかける場所を選べます。紙のまま重複作業を減らす方法も、確認済みの相手に限って電子契約サービスを使う方法も候補です。困っている仕事に照らして比べます。
| 選び方 | 選ぶ場面 | 変える仕事 | 残る仕事・引き受ける負担 |
|---|---|---|---|
| 紙を続け、重複作業を減らす | 件数が少ない、紙希望が多い、説明の時間を確保できない | 同じ内容の転記や、社内で重ねている確認を減らす | 紙の発送、返送確認、書類を探す仕事は残る |
| 準備と説明をそろえる | 担当者ごとに文面の準備や相手への説明が違う | 社内で確認した文面と、相手に伝える内容をそろえる | 紙か電子かは相手と確認。質問への対応と完了確認は人が担う |
| 確認済みの範囲で標準の電子契約サービスを使う | 文面・権限・方式を確認でき、説明と確認の担当時間も取れる | 対象の書類と相手先に限って、電子で締結を進める | 紙希望先への対応、電子での未完了分の確認、継続利用の負担が残る |
| 測った残作業だけ連携・自動化する | 導入後も転記や状況確認に時間がかかり、その作業量を把握できている | 効果を確かめられる範囲で、既存システムと情報をつなぐ | 連携の維持、失敗時の確認、相手への説明は残る |
| 標準機能で足りない部分だけ個別に補う | 既存機能や運用の変更では満たせない必要が具体的に確認できた | 必要な社内の一覧や他システムへの受け渡しなどを、狭い範囲で補う | 開発と保守の負担を引き受ける。契約の署名機能は既存サービスを使う |
この五つを順番に進める必要はありません。紙を続けながら説明をそろえることも、標準サービスの機能だけで使い続けることもできます。連携や個別開発を選ぶのは、残った仕事と不足する機能が具体的になってからです。
架空の保守会社では、新しく結ぶ契約に絞る
ここからは、業務用厨房機器の点検・保守を請け負う、架空の会社の例です。実在企業の導入事例や成果ではありません。この会社の代表は、今後新たに締結する保守業務委託契約を電子で進めたいと考えています。取引先の準備と社内の仕事を確認し、次のように分けました。
電子で進める準備が整った相手先
一部の取引先とは、電子で進める意向、利用方式、対応者と権限を確認できています。自社でも、この範囲に使う文面と締結権限、個別要件の確認を終えたものとします。代表は、この相手先群との新たな保守業務委託契約を、今回の電子契約の対象に決めました。使うのは標準の電子契約サービスです。
この範囲には、営業担当の説明時間と、管理担当の送付・完了確認の時間を割り当てます。最初から全取引先向けの説明会やシステム連携は用意せず、対象先との契約を進めるための準備に時間を使います。
紙を希望する相手先、方式が未確認の相手先
紙を希望する相手先とは、これまでの方法を続けます。電子での進め方が未確認の相手先も、今回は対象に含めません。営業担当が意向を確かめる時間は取りますが、取引を急いでいる最中に切り替えを求めず、紙の準備を進めます。
管理担当には、これらの契約の印刷、発送、返送確認の仕事が残ります。代表は、その時間を電子化で空く時間として扱わず、引き続き業務予定に残します。
すでに締結を終えた過去の紙
過去の契約書は、保守内容を照会するときに探して読むためのものです。今回は従来の管理を続け、探す手間が問題になっている書類だけ、別途整理を検討します。過去の紙をまとめてスキャンする作業は、新しい電子契約を始める条件にしません。
こう分けると、今回使う時間は、準備が整った相手先への説明と締結に絞れます。紙を希望する先の仕事は残し、過去の紙の一括整理は今回の作業に加えない、という会社全体の配分になります。
紙の仕事を残し、説明と完了確認の時間を確保する
この会社では、営業担当が相手への初回説明と質問への対応を担い、管理担当が確認済みの契約書を送付し、締結の完了を確認します。営業責任者は、対象先への連絡予定に説明の時間を組み込みます。管理責任者は、紙の発送・返送確認の予定を残したうえで、電子契約の送付後にも確認の時間を確保します。
相手の対応が止まっていたら、管理担当が営業担当へつなぎ、営業担当が事情を確かめます。文面や権限に確認が必要な変更が出た契約は、そのまま送付せず社内の確認担当へ戻します。担当者がどちらか迷う契約も、確認が済むまで電子の対象には加えません。
代表が引き受けるのは、この分担を通常業務と両立できる範囲に保つことです。紙の仕事を残したまま説明と確認を追加できないと分かれば、対象を狭めるか、新たな切り替えを保留します。電子で送れる相手の数に合わせて、担当者の仕事を増やし続ける運用にはしません。
- 最初の対象:文面・権限・方式の確認が済んだ相手先との、新たな保守業務委託契約。
- 担当と時間:営業が説明、管理が送付と完了確認。各責任者が通常業務の予定にその時間を確保する。
- 残す仕事:紙希望先・未確認先への紙対応と、過去の紙の管理。
- 保留する条件:相手や文面の確認が済まない、または紙対応と説明・完了確認を両立できない。
最初の対象先との契約が一巡したら、残る仕事を見直す
この会社が次に見直すのは、最初に対象とした相手先との新規契約が一巡したときです。営業責任者と管理責任者が、説明や質問への対応に使った時間、完了待ちの状況、紙の発送・返送確認に使った時間を代表に伝えます。
残る負担が相手への説明なら、説明内容や対象先を見直します。二重入力なら、その作業量を確かめてから連携を比較します。標準機能で対応できることを確認し、個別の補いが必要な場合にだけ、その範囲を検討します。導入済みの対象を広げること自体は、次の目標にしません。
紙を希望していた取引先から電子対応の希望が出たときも、その相手先を再検討する機会です。文面や権限、進め方を確認し、追加の説明と完了確認を担えると分かったら対象に加えます。
そもそも契約件数が少なく、紙のまま無理なく回っている会社なら、重複作業を減らすだけで当面の負担を抑えられることもあります。無料プランを使えても、相手の準備や社内の担当時間が足りなければ、その範囲は見送れます。
この架空の会社は、準備が整った相手先との新規契約だけを電子で始め、紙対応と過去の書類の管理は続けると決めました。初回の契約が一巡するまでは対象を増やさず、実際に残った仕事を確かめてから、続ける範囲を判断します。