工事の原価管理表|追加発注前に完了時の粗利を確かめる
追加の材料や外注を頼むと、この工事にはいくら粗利が残るのか。承認前に確かめたいのは、工事が終わるまでの費用を含めた採算です。
原価管理表には、計上済みの原価に加え、発注済みで未計上の分と、未発注の残工事にかかる見込みを入れます。知式では、この完了見込み原価を予算と比べ、追加発注を承認するか、条件を見直すかを決める使い方を提案します。

原価予算を残し、完了見込みを更新する
原価予算は、受注額から目標粗利額を引いた基準です。完了見込み原価は、その工事を終えるまでにかかる費用の最新予測。予算は承認した額として残し、見込みは別の欄で更新します。予算自体を見直す場合も、変更前の額と承認理由を残します。
比較に使う費用は、同じ工事・同じ更新日時で、重複しないように次の3区分へ分けます。
- 計上済み原価:会社の基準に従って、工事原価として記録した額です。支払いがまだでも、原価に計上したものはここに入ります。
- 発注済みだが未計上の原価:発注した金額のうち、まだ原価に計上していない部分です。一部を計上済みなら、未計上の残額だけを入れます。
- 未発注の残工事見込み:これから必要な材料や外注などの費用です。発注を伴わない残りの自社作業人件費や工事経費も、上の2区分と重ならないように含めます。
請求書が届いて原価を計上したら、発注済み未計上の欄から該当分を減らします。同じ費用を両方へ足すと、二重に数えることになるためです。請求額が見込みと違った場合は、その差と残額も更新します。
金額が分からない費用は「未確認」として、確認担当と期限を残します。集計できた分は確認済みの小計とし、不明分をゼロ扱いした合計を完了見込みとして承認に使わないようにします。
人件費や共通費をどこまで含めるか
材料費、外注費、自社作業人件費、工事経費など、工事原価に含める範囲を会社内でそろえます。複数工事で共用する費用の配賦方法や、自社作業の時間単価も同じルールで扱います。
この表の工事粗利は、受注額から社内で定めた工事原価を引いた管理上の見込みです。一部の費用だけを集める場合は「材料・外注費を引いた残額」など、対象が分かる名前にします。会社全体の利益には本社経費なども関わり、現金の余裕は入出金の時期から別に確かめます。
20万円の追加で、粗利見込みはどう変わるか
以下は、同じ工事・同じ更新日時で追加前後を比べる架空例です。金額はすべて税抜。受注額240万円に対し、目標粗利率を任意に25%と設定します。この25%は例のための設定で、業界の標準や推奨値ではありません。
目標粗利額は240万円の25%で60万円。原価予算は、受注額240万円から60万円を引いた180万円です。材料費、外注費、自社作業人件費、工事経費を含めた現在の完了見込み原価は、80万円+60万円+30万円で170万円とします。
そこへ、170万円に含まれていない20万円の追加案が出た場合を比べます。表の追加後は、この案を実行した場合の試算です。実際に承認して発注した後は、該当額を発注済み未計上へ移し、追加案の欄から外します。
| 項目 | 追加前 | 追加後 |
|---|---|---|
| 受注額 | 240万円 | 240万円 |
| 原価予算 | 180万円 | 180万円 |
| 計上済み原価 | 80万円 | 80万円 |
| 発注済み未計上 | 60万円 | 60万円 |
| 未発注の残工事見込み | 30万円 | 30万円 |
| 上の費用に含まれない追加案 | なし | 20万円 |
| 完了見込み原価 | 170万円 | 190万円 |
| 粗利見込み | 70万円 | 50万円 |
| 粗利率見込み | 29.2% | 20.8% |
| 原価予算との差 | 10万円の余裕 | 10万円の超過 |
粗利見込みは受注額から完了見込み原価を引いた額です。粗利率は、その粗利見込みを受注額240万円で割り、小数第1位に丸めています。
180万円から計上済み80万円だけを引くと、残りは100万円です。ただし、この100万円には、発注済みの未計上分や残工事に使う分も含まれています。完了見込み170万円を引いた10万円が、目標粗利を保てる残りの幅です。
20万円の追加案をそのまま承認すると、原価予算を10万円超え、粗利見込みは50万円・20.8%になります。10万円は予算の超過額であり、目標粗利に届かない額です。この例では、工事粗利はなお50万円残る計算です。
追加発注を承認する条件を決める
採算が分かったら、追加発注の条件を決めます。予算内かどうかに加え、費用の確認が済んでいるか、条件を変える合意ができるかで判断が分かれます。
| 判断 | 条件と決めること |
|---|---|
| 承認 | 必要な費用がそろい、追加後も原価予算内に収まる。必要な工事範囲、安全、品質、納期を満たす条件を確認して承認する。 |
| 条件見直し | 予算を超える場合は、未発注の範囲や仕様、手配条件を関係者と合意して見直す。変更後の完了見込みを計算し直して判断する。 |
| 例外承認 | 目標未達を受け入れる場合は、その理由、承認する追加額、完了時の粗利見込み、承認者を残す。 |
| 確認待ち | 必要な費用が未確認なら、未承認の新規追加発注の判断を保留する。確認担当と期限を決め、納期への影響を責任者に伝える。 |
上の例で受注額を据え置き、追加案を承認するなら、合意できる範囲で原価を10万円下げるか、粗利50万円・20.8%を受け入れるかを選ぶことになります。例外承認をしても、予算180万円と見込み190万円は別々に残すので、目標との差を後から確認できます。
顧客への追加請求を予定している場合は、金額と範囲の合意後に受注額へ反映します。交渉中は現在の受注額で判断し、追加売上を見越して採算をよく見せないようにします。
確認待ちの対象は、新しい追加発注の判断です。既存の契約義務や安全、品質、納期に関わる対応は責任者が並行して確認し、表の数字だけで履行や必要な作業を止めない運用にします。承認時には、採算とともに支払計画も確かめます。
原価管理表の作成を依頼する前に
表を作る担当者には、列名だけでなく、確認したい見込みと承認の条件を渡します。
- 確認したい見込み:工事完了時の原価と粗利、追加案を入れる前後の差、未確認の費用。
- 対象原価:含める費用、共通費の配賦方法、自社作業人件費の算出方法。
- 更新担当と時点:誰が計上済み原価と残工事の見込みを更新するか。追加発注の承認前など、どの時点の数字をそろえるか。
- 承認者と例外条件:予算内の追加を誰が承認し、目標を割る場合は誰が何を確認して決めるか。
既存の表でこの判断を続けられるなら、その表を維持します。複数人の更新や最新版の管理が負担なら、既製サービスが対象原価と承認条件に合うかを比較します。転記だけが負担なら、既存の仕組みを連携させる方法を検討できます。自社固有の承認条件などが扱えないときに、その不足だけを追加改修の対象にします。
まずは進行中の工事を1件選び、完了までの費用と追加案を並べ、誰がどの条件で承認できるかを確かめてください。判断に足りなかった欄や更新の決まりが、表の作成・改修を依頼する範囲になります。